人工受精へステップアップ

通水検査後、しばらくタイミング法を続けてみたが、やはりダメだった。

毎月エコー検査で卵胞のサイズや排卵したかどうかを見てもらっていて、毎回経過は順調だった。

しかし律儀なことに毎回生理も順調にやってくるのである。

夫と話し合い、人工受精にステップアップすることにした。


ステップアップを決めたものの、正直私は人工受精で結果が出せる気がしていなかった。

ネットやパンフレットで人工受精の説明を見ると、人工受精が効果的なのは男性側に原因がある場合のようだが、夫の精液検査の結果は、問題ないどころかむしろ良かったのである。

人工受精で妊娠できるなら、タイミング法で既に妊娠できているはずなのでは?と思いながらも人工受精を受けることに決めた理由は、保険適用外の高額な検査を受ける勇気も、ましてや人工受精をすっ飛ばして体外受精にチャレンジする勇気もなかったためである。


保険適用外の高額な検査(ERAEMMA、ALICE等)で不妊の原因が分かることもあるらしい。

しかし当時私が通っていたクリニックでは実施していなかったし、なにより検査費用が高すぎる。10万円は軽く超えてしまうらしい。

それに比べれば人工受精は1万円は超えるがまだ手の届くお値段で、ハードルがかなり低かったのだ。

ただ、今までの検査と違って人工受精は15時くらいまでしか受け付けておらず、平日は仕事があるので受けるのが難しかった。

先生と相談した結果、卵胞チェックで排卵のタイミングを予想して、土曜日に実施できそうな周期だけチャレンジすることになった。

卵胞チェックで卵胞が十分育っていて、土曜日にタイミングが合いそうだと分かった周期には、排卵を促す注射を打ってもらった。


人工受精自体はまったく痛くなかった。

排卵したことをエコー検査で確認してから、持参した精液の洗浄が行われるのを1時間ほど待って、洗浄された精液をいつもの内診台で注入してもらうだけである。

持参したものを(もちろん中身が見えないように袋に入れてあるが)受付で渡すときにちょっと抵抗があったのと、お会計の金額がちょっと跳ね上がったのと、黄体ホルモンのサポート程度の薬を出されてそれを毎日飲むことになったくらいで、気持ち的にもタイミング法と特に変わりはない。


そしてそれまでと変わりなく、毎回しっかり生理がやってくる。



人工受精には3回チャレンジしたが、やはり結果は出なかった。

通水検査、痛いっ!

次の検査は卵管通水検査だった。

子宮に食塩水を入れて、卵管の通りをチェックする検査である。

類似(というより上位互換)の卵管造影検査という検査だと造影剤を注入することで実際に卵管の通り具合を見ることができるようだが、私が通っていたクリニックでは通水検査しか行っていなかった。

パンフレットに「痛みを伴いますが」という記載があり、不安になってネットで体験談を検索した。

やはりどうも痛い検査らしい。


ちなみに検査という名前だが、実際は卵管の通りを良くする処置という意味合いも大きいらしく、この検査の実施後数ヶ月はゴールデン期間と呼ばれているらしい。

 

私は人一倍痛みに弱いという自覚がある。痛い検査は受けたくない。

しかしもう私は治療のベルトコンベアに乗ってしまっている。

怯みながら予約を入れ、怯えながら検査当日を迎えた。

 

産婦人科に行ったことのある女性にはおなじみの内診台に乗り、先生が簡単に状況を説明しながら食塩水を体内に入れていく。

看護師さんが都度「大丈夫ですかー?」と声をかけてくれる。

痛みについては正直もうあまり覚えていないが、多分重い生理痛のような痛みだったと思う。

頭の上の方からどんどん血の気が引いていくような感じがした。


検査は無事に終わり、内診台が下がる動きが停止する。

しかしすっかり貧血を起こしてしまった私は、立ち上がることができなかった。

ひどい顔色をしていたらしく、看護師さんが肩を支えてベッドのある部屋まで連れて行ってくれた。

看護師さんがとても優しかったことはしっかり覚えている。

しばらくベッドで休ませてもらい、先生から「水の通りはスムーズでした」と説明を受けて帰宅した。

帰宅した後もまだ頭がクラクラしていて、その日はそのままベッドに倒れ込んだ。

ラクラした頭で、「通りがスムーズであの痛みだったら、詰まりがあったらどうなってたんだ」と考えてゾッとした。

 

が、痛みに耐えた甲斐あって、検査後しばらくはゴールデン期間が待っている。

 

しかしその後も結果は出ないまま、ゴールデン期間はあっという間に終わってしまった。


ちなみに、もう何年も当たり前のように続いていた排卵出血が、この通水検査を境にぴたっと起こらなくなったのだが、後日の診察で先生に聞いてみたところ「関係ないからたまたまでしょう」と言われてしまった。

いざ初診

初診の予約を入れた後、自己流のタイミング法を続けるも妊娠することはなく、いよいよ初診の日がやってきた。

 

クリニックの待合室の椅子はすべて埋まっていて、座れない人が立って待っているほど混んでいた。

初診が3ヶ月待ちだったことからなんとなく察してはいたが、ずっと「なんで私だけ妊娠できないんだろう」と思っていたのに、実際には自分以外にもこんなに悩んでいる人がいるのかと改めて驚いた。

 

その日は今後の治療方針の説明と、夫婦二人ともの採血、時期的にエコーでの卵胞チェックがあった。

不妊治療のスタートの歳としては)まだ若いので、まずはタイミング法から始めることになった。

 

自分では、採血で黄体ホルモンあたりの数値が悪くて、薬を処方されて妊娠に至るのだろうと予想していた。

生理周期は長いほうだが、毎回生理はちゃんと来るから排卵はしているだろうし、不正出血があるので問題は黄体ホルモンなのだろう、という、ネット知識をベースとした素人判断だった。

しかし後日出た血液検査の結果はどの項目も問題なしだった。

 

その後数日ごとに通い、他の血液検査や超音波検査(卵胞チェック、排卵チェック)、夫の精液検査を受けたが、すべて問題なしだった。

大体の検査は「生理日後」と来院日を指定されるのだが、仕事を定時で上がればどうにか受付時間に間に合ったので、平日に通うことができた。

平日夜の混み具合は待合室の椅子にぎりぎり座れるくらいだった。

クリニック受診を決めるまで

31歳で結婚してから、何ヶ月経っても妊娠しなかった。

一度生理が1週間遅れて恐る恐る妊娠検査薬を試してみたこともあるが、見事な陰性だった。その間に、何人もの友人から妊娠、出産報告が届いた。

それが段々つらくなっていった。生理が来た翌日に届いた報告ではなおさらだった。

 

私には20代の頃から、排卵出血と思しきものがあった。

排卵の時期になると微量に出血するのだ。

ダラダラ続くこともあったので独身時代意を決して婦人科に行ったものの、「冷えからくるものだろうから気にしなくていい」と言われて漢方を出されるだけだった。

漢方もいまいち効果が分からず、処方された分を飲み切ることなくやめてしまった。

 

その排卵出血の量が、妊活を始めたあたりから増えていた。

トイレットペーパーについた出血が「えっ、何これ」と思うくらいの量のときもあった。

 

成果が出ない月が続くうちに、夫が転勤になった。

転勤に伴う引越しで、私の通勤時間はこれまでの2時間から半分の1時間に減った。

通勤時間の短縮で私のストレスはだいぶ軽減されたと思う。

しかしそれでも一向に妊娠の気配はなかった。

 

そのうち夫が「不妊治療のクリニックに行ってみるのはどうか?」と言い出した。

夫は私(女性側)の問題だと決めつけず、当たり前のように二人で受診、検査を受けるつもりでいてくれた。

しかし私は渋った。

生理は順調に来るし、病院に行くほどではないと思っていた。

というより、本当は病院に行って現実を叩きつけられるのが怖かった。

 

それから数ヶ月後、病院に行く決心がついたのは、私と同時期に結婚した友人から妊娠報告を受けた日だった。

友人の妊娠自体はとても嬉しかった。

ただ、その日トイレに寄った時、ちょうど排卵の時期だったのだろう、いつものように出血があったのだが、その量がいつもとは違い、おりものシートから溢れそうになっていた。

今まではこんなに大量ではなかったのに。私の体は何かトラブルを起こしているのではないか。

友人と自分を比べて、ひどいショックを受けた。

そしてその日の夜、夫に不妊治療のクリニックに行こうと思うと宣言した。

 

婦人科自体あまり数の多いものではないと思うが、不妊治療を扱うクリニックとなるとさらに数が少なかった。それなのに、調べてみたら運良く徒歩10分圏内に1件、専門のクリニックがあった。

土曜日希望ということもあり、予約が取れたのは3ヶ月ほど先の日だった。

はじめましてから2年

2年前の「はじめまして」に書いたとおり、このブログはどこにも吐き出せない気持ちを吐き出すために開設したものです。

当時は不妊治療の成果が出ない中で卵巣嚢腫が見つかり、わー!っと叫び出したいくらいなのにそれができないという大きなストレスに押し潰されそうな毎日を送っていました。

ブログに吐き出すことで楽になればと思いアカウントを用意したのに、結局文章にまとめることができないまま、開設だけして放置していました。

 

結論から言いますと、その後4回目の体外受精に成功し、2021年に無事出産しました。

月日が経ち記憶も段々薄れていく中で、不妊治療に関する出来事や当時の気持ちを忘れないようにという意味で、改めて今回文章にまとめてみようという気持ちになりました。
不妊治療だけでなく、出産、卵巣嚢腫の手術についても書き残しておきたいと思っています。

 

ネットの片隅でひっそりと開設しているブログではありますが、もしこのブログに行き着いた方がいらっしゃいましたら、以下の点についてご承知おきください。

・私の体験はあくまで一例であり、不妊治療を受ける方がみな同じ検査、治療を受けるわけではありません。
・意見についてもあくまで一意見であり、不妊治療経験者全体の気持ちを代弁した意見ではありません。

はじめまして

はじめまして、奈都美と申します。

既婚子なしの30代会社員、性別は女です。

日常生活で吐き出せない思いが溜まりに溜まった結果、勢い余ってブログを立ち上げてみました。

 

ブログを始めるために、私には乗り換えなければならない壁があります。

10年以上前、その時も「私のことを誰も知らない環境で、気兼ねなく好きなことを書き連ねたい!」という気持ちでブログを始めました。

その初日、うっかりログアウトせず地元の友人のブログを見に行ってしまったせいで、彼女から「はじめまして、足跡から来ました。仲良くしてくださいね!」というメッセージをもらい、私の「私のことを誰も知らない環境」はあっけなく崩壊しました。

二度と同じ過ちを繰り返さぬよう、ログアウトはこまめに行おうと思います。